ハレの日

高校以来の友人の結婚披露宴に出席した。

付き合いで行くのではなく、本当に真心を込めて参加するのだから、今までのどの式よりも丁寧に準備をした。

ドレスも買ったし、靴も磨いたし、メイクの練習の成果をだして髪だって巻いた。

自分なりの素敵なコーディネイトでバッチリきめて、電車に揺られ参列者の友人と合流して。

浮き足立ってはいたけど、テーブルについていたときはまだ冷静だったし、どこか甘く見ていた。

それが、どうした。

花嫁の彼女を見た瞬間、頭が真っ白になった。

その瞬間まで私は、あの子はまだ初めて出会った頃、あの学校の制服を着ていたあの頃のそのままだとどこかで思い込んでいた。

結婚相手の話も聞いてはいたし写真も見たけど、実物を見るのは初めてで、うわーすごーい人だー動いてるーなんてぼんやりとした感想をもったりして。

そんな新郎に対してなめた考えをしていたのは本当に失礼だし申し訳なかったけれど、一旦私の言い分も聞いてほしい。

そうでもしないと私が初めて会うあの子を直視できないのだ、涙腺が決壊するのだ。

 

青春だった。

楽しかった。

私が新婦や友人らとあったあの時間は本当に素晴らしくて、多分何億ドル積まれたとしてもあの頃を売ることは無いだろう。

そんな中でいつも新婦を思い出そうとすると絶対笑顔で浮かんでくる。

なんなら思春期特有の高めの笑い声だってついてくる。こう、文字に起こすとすると「ぃやーはっはっはっ」みたいな。これがまた可愛いんですよ。

辛いことがあったのはもちろん知ってるけれど、やっぱり記憶の中でも、いろんな種類が詰まった花束みたいな笑顔がふさわしい子だなって思っていて。

会えない時もあったけど、みんなで限られた時間をすり合わせながらお茶してご飯食べて出かけて旅行して馬鹿話してしんみりして笑って。

そうやってきたはずのウェディングドレスの綺麗な彼女、全く既知ではなかった。

初婚だからーとかそういう事実以上に、きっと自分がかなり感傷的になっていたからだと思う。

大事な友人が大事な人を見つけて、これからいっぱい幸せになろうとしている。

その事実がどうしようもなく嬉しくて、でもどこか切なくて。

今回の新婦は別にグループ初の新婦ではない。

けれど色々な都合もあったため、今回が友人の結婚式に出席する初めてで。

私は今回の新婦をみやりつつ、今まで写真でしか見ていない彼女達の晴れ姿を脳内で再現していた。

そして後悔していた。

出られる式は出ておくべきだった──たとえ会社に抗ってでも。

こんな幸せな場所に心から祝福するために出席できるのは、人生で何回あるのだろう。

そんな貴重なことを、人の代わりがきく仕事で潰すなんて、本当に勿体ないことをしたのだ。

 

そんなぐるぐるうずまく後悔は、新郎の最初の挨拶でふっとんだ。

詳しくは書かないが、ちょっとした笑いも起こったりして。

その様子をなんとも言えない、でも幸せな表情で彼女は見守っていて。

それを見ることが出来て本当に幸せだなぁと、式終盤で流れることになる涙を、その時は必死で堪えながら思っていた。

 

結婚おめでとう。どうか、それぞれが世界で一番幸せな人でありますように。